大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ナ)11号 判決

原告 酒井義雄

被告 全国選挙管理委員会委員長

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は本件の最初の口頭弁論期日に出頭しなかつたので、当裁判所は訴状、訴状訂正書及び昭和二十五年十二月一日附準備書面を陳述したものと見なした。

右訴状その他の書面によれば、原告は「昭和二十五年六月四日富山縣中新川郡宮川村投票区において執行せられた、参議院(全国選出)議員選挙は無効とする、訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、

一、宮川村の選挙管理委員佐々木傳造は昭和二十三年以來宮川村の若杉、中小泉間道路改良工事の請負人であるから、地方自治法第百九十三條及び第百四十二條にていしよくし選挙管理委員の資格のないものである。また昭和二十五年五月六日開催の宮川村選挙管理委員会は委員四名中松枝善正は欠席し佐々木傳造、青木挙清、栂正一の三名出席参議院議員選挙の宮川村投票及び開票管理者として佐々木傳造を選出したが右は佐々木傳造の一身上に関する事件であるから地方自治法第百八十九條第二項に該当し、同條第三項の措置をとるべきにかかわらず、会議を開き、佐々木傳造を選出したものである。從つて右会議は選挙管理委員の資格のないものが参與し、手続も違法であるから、佐々木傳造は宮川村の投票及び開票管理者の資格のないものである。

二、同年五月二十九日開催の選挙管理委員会は全員四名出席し参議院議員選挙の宮川村投票立会人として選挙管理委員の松枝善正、青木挙清、栂正一の三名を選任したが、これまた右三名の一身上に関する事件であるから、地方自治法第百八十九條第二項にていしよくし同條第三項の措置をとるべきにかかわらず、会議を開き右三名を選任したものであるから、投票立会人の資格のないものである。從つて本件選挙は投票管理者投票立会人及び開票管理者の立会なく公職選挙法第三十九條によらず投票管理者でないものの指定した投票所で執行せられたものであるから無効であつて、その投票は全部無効である。

三、しかるに宮川村投票区の開票の結果は有効投票千百三十三票であつて参議院(全国選出)議員選挙の次点者門屋盛一の得票十四万三千四百二十五票に加算すれば、当選者寺尾豊の得票十四万四千五百十九票より多きこと三十九票となり公職選挙法第二百五條に該当し、選挙の結果に異動を及ぼすが故に本件選挙を無効とすべきものであると述べた。

被告は主文第一項同旨の判決を求め、答弁として、

一、佐々木傳造が宮川村に対し何等かの請負関係に立つた事実を否認する。原告主張の若杉中小泉間の道路改良工事は宮川村と関係部落である若杉、中小泉両部落との間の請負契約であつて、佐々木傳造は右両部落の代表者に過ぎない、從つて、佐々木傳造は何等選挙管理委員たるの資格を欠くことなく昭和二十五年五月六日の選挙管理委員会は委員佐々木傳造、青木挙清及び栂正一の三名が出席し定足数に欠けるところがなかつた。

二、次に原告は同委員会が投票、開票管理者として佐々木傳造を選任したことは自治法第百八十九條第二項にていしよくする違法行爲であると主張しているが、これは法律上及び事実上誤つたものであつて、本件の場合につき同條の適用を生ずる余地は全く存しないものである、論理的に見ても、元來選挙については選挙自体の性質上百八十九條二項の議事とは解せられないのであつて、(通説、理由は選挙は予め何人が当選人となるか判らない、即ち事前においてその結果を確定的に予測することは何人にもできない筈のものだからである。)実際の例としても自己投票が永年各般の選挙の場合に有効と認められて來たことは疑のない事実であつて、今更問題とはならないことである。

三、昭和二十五年五月二十九日の宮川村選挙管理委員会には委員全員(四名)が出席し、投票立会人として松枝善正、青木挙清及び栂正一を選任したのであるが、かかる選挙行爲については本來理論的に地方自治法第百八十九條第二項の適用のないものであることは前述の通りであるからその点からも原告の主張は理由のないものであるが、委員長佐々木傳造が順次に委員中から松枝善正、青木挙清、栂正一を投票立会人に指名し、本人以外の二人の委員がこれに賛同して決定したもので、その手続に欠くるところがない。

四、右参議院議員選挙の最下位当選者は寺尾豊で、その得票数は十四万四千五百二十四票であり、次点者は増田俊明で、その得票数は十四万三千三百三十票であるから、最下位当選者と次点者の得票数の差は千百九十四票あり、仮に宮川村の有効投票の全部千百三十三票が無効であるとしても選挙の結果に異動を及ぼさないから、公職選挙法第二百五條を適用して選挙一部無効の判決をなすべき場合でないと述べた。(立証省略)

三、理  由

昭和二十五年六月四日富山縣中新川郡宮川村投票区において執行せられた参議院(全国選出)議員選挙の執行において、仮に原告主張のような事実があり、これが選挙の規定に違反することがあつたとしても、当裁判所が公務員の職務上作成したものと認め、眞正な公文書と推定せられる乙第七号証によれば、本件選挙の末位当選者寺尾豊の得票は十四万四千五百二十四票、首位落選者増田俊明の得票は十四万三千三百三十票なることが認められるからその差は千百九十四票であつて、宮川村における有効投票数が千百三十三票なることは原告の自ら主張するところであるから、仮に前記選挙規定違反により宮川村における右有効投票が全部無効であるとし、これが末位当選者の得票中に混入せられていたとしても、末位当選者の得票は首位落選者の得票よりも多数であるから、その当選に異動を生ずるおそれがなく、從つて選挙の結果に影響するところがないから、本件選挙は無効とすべきものではない。從つて他の爭点に関する判断を省略し原告の請求を棄却すべきものであつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條第九十五條により主文の通り判決する。

(裁判官 藤江忠二郎 山口嘉夫 猪俣幸一)

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